『ニーベルングの指環』連作No.4 第3日『神々の黄昏』
神々の黄昏
『同級生2』より「鳴沢唯」「竜之介(主人公)」「西御寺有友」、同PlayStation版より「西御寺静乃」
『下級生』より「佐竹晴彦」です。
リヒャルト・ヴァーグナーの楽劇「ニーベルングの指環(Der Ring des Nibelungen)」に基づく連作CGの最終作です。
2ヶ月ぶりの新作CG、すなわち連作の第3作「ジークフリート」を仕上げた後、制作意欲が衰えてしまわないうち、それと3月下旬には身辺が多忙になりそうなので、腰を据えてCG制作をしている暇があるうちに制作したいCGを制作してしまおうと、第3作を完成させるが早いか制作に取りかかり、8日の夜から11日までかかって完成しました。
第3作と同様これも、第2作「ヴァルキューレ」の制作にかかるまでに、絵に描く場面と構図も登場人物とキャラの割り当ても決まっていましたから、人数が多い割には短時間で仕上がった方だと思います。

800「どうだ知美、今度こそ間を開けずに制作しただろう?」
知美「それは認めないわけにはいきませんね。しばらく制作しなかったかと思うと常軌を逸したペースで立て続けに制作する、むらっ気のひどさは相変わらずですけど」
800「……そういう言い方しかできないのか、知美は?」
知美「さあ、館長、皆さんが解説を待ってますよ。一般の人にわからない題材で描くから、館長は」
800「……(-_-)」

まず、楽劇の第4部「神々の黄昏」のあらすじを紹介します。

ライン河畔に館を構えるギービヒ家の当主グンターは、すでにジークフリートの妻になっているブリュンヒルデを妻に迎えたいと思い、同時に妹グートルーネにふさわしい婿を探しています。
そこでグンターの異父兄である狡猾なハーゲン(実はあのアルベーリヒの息子です)は、岩山にブリュンヒルデを残して独りで館を訪れたジークフリートに、目の前にいる女性に惚れると同時に過去に出会った女性を忘れるという秘薬を飲ませます。するとジークフリートはブリュンヒルデを忘れてグートルーネに惚れてしまいます。そしてジークフリートはグートルーネに求婚する一方で、グンターに誓いを立て、かつてアルベーリヒがミーメに作らせた隠れ兜を使ってグンターになりすまし、ブリュンヒルデと一夜を過ごした後、グンターの館に連れてきます。
ジークフリートがグンターになりすましてブリュンヒルデと一夜を過ごした時、ブリュンヒルデから取った指環──実はこの指環こそ、ラインの乙女から奪った黄金でアルベーリヒが作り、ヴォータンを経て巨人ファーフナーの手に渡ったあの指環、これを持つ者は世界を支配する力を得る指環なのです。指環とともにファーフナーの手に渡った隠れ兜の力で竜に姿を変えて指環を護っていたファーフナーを、ジークフリートは倒して指環を奪い、ブリュンヒルデと結婚した後、ブリュンヒルデにその指環を与えたのでした──がジークフリートの手にあったことから、ブリュンヒルデは自分と一夜を過ごしたのがグンターではなくジークフリートであることを知ります。
グンターはジークフリートと結んだ誓いを破られた形になって恥辱にまみれ、ブリュンヒルデはジークフリートが自分を捨ててグートルーネに求婚したことを知って嫉妬に狂います。ハーゲンはブリュンヒルデを唆してジークフリートの弱点を聞き出し、グンターを唆してジークフリートを狩に誘い出して、背後から槍で突いて殺します。
ジークフリートが亡骸になって館へ戻ってくると、ジークフリートの指環はグートルーネの物になるべきというグンターと、もとより指環を手に入れることしか念頭にないハーゲンが争い、ハーゲンはグンターをも殺してしまいます。
そこへ、全てを悟ったブリュンヒルデが登場し、ジークフリートの亡骸から指環を取り、呪いに満ちた指環を、ジークフリートの亡骸を焼く火をもって浄めた後にラインの乙女に返し、自らもその火でジークフリートに殉じると宣言して薪に火を放ちます。ブリュンヒルデが殉じて果てると、ライン川の水が増して薪を覆い、ラインの乙女たちが指環を取り戻します。指環を奪おうとしたハーゲンはラインの乙女によって深みに引きずり込まれ、ブリュンヒルデが薪に放った火はギービヒの館を焼き、ヴォータンの住まう天上の神々の館まで焼き尽くします。これが「神々の黄昏」なのです──。

場面としてはクライマックス直前になります。ジークフリート(竜之介)の亡骸が薪に安置され、指環をめぐってグンター(西御寺有友)とハーゲン(晴彦)が争ってグンターはハーゲンに殺され、夫と兄を相次いで失ったグートルーネ(西御寺静乃)は悲嘆にくれています。ジークフリートの枕辺にブリュンヒルデ(唯)が立ち、ブリュンヒルデが右手に高く掲げた指環を、ハーゲンが奪い取ろうとしているところです。
正確に言うと元の楽劇には、ハーゲンがブリュンヒルデから指環を奪い取ろうとする場面はなく、ブリュンヒルデがジークフリートに殉じて果て、ラインの乙女たちが火葬の跡から指環を取り戻すまで、ハーゲンはじっと傍観しているだけなのですが、絵として描いた時に私が考えうる最も劇的な場面にするために、創作を加えました。

800「人物関係を『同級生2』に当てはめると、竜之介の恋人が唯、唯に横恋慕しているのが有友、有友が大切にしている妹が静乃ってことで、ジークフリート、ブリュンヒルデ、グンター、グートルーネの関係にぴったり当てはまるから、それを狙って配役を決めたんだ。確かPlayStation版では、竜之介と静乃が結ばれると有友と唯が結ばれることになっていたはずだし」
竜之介「西御寺が唯を俺から奪うために西御寺に入れ知恵したやつって、あのデブじゃなかったっけ?」
800「それは承知だ。だが、これ以上あの腐肉の塊を描きたくなかったんだ。それにハーゲンは剣を執ればグンターが遠く及ばないほどの勇士なんだから、あんな脂肪の塊じゃハーゲンにふさわしくないだろう?」
竜之介「まっ、そりゃそうだな」
晴彦「その配役には不賛成だっ! 特別出演というから来てやったのに、一番の悪役ではないかっ!」
800「この場面には悪役が必要なんだ。それも私が、悪役を割り当てることに躊躇しない人物がね」
晴彦「どういうことだ?」
800「『下級生』に登場する生身の人間で、私の一番嫌いなのが晴彦だったからさ」
晴彦「……不愉快だ! 帰るっ!!」

竜之介「しっかし、前の絵のコメントを聞いてからちょっと気になってたけど、ハッピーエンドどころか正反対だよな。俺が死ぬ、ボンボンも死ぬ、静乃ちゃんは泣く、唯は怒る…」
唯「……お兄ちゃん、死んじゃったの?」
800「『神々の黄昏』のどれか1場面を描こうと思ったら、この場面しか思いつかなかったんだが……。上に書いたあらすじの通り、もうすぐ唯と竜之介は、天国で一緒になるんだよ」
唯「ふーん、そうなんだ……っていつも言うと思ったら大間違いだよっ!!」
800「う〜ん……ヴァーグナーが『指環』に込めたメッセージは『世界を支配する権力に象徴される男性原理の呪いからの、自己犠牲という究極の愛(女性原理)による救済』ってことで、この場面のブリュンヒルデは、4部作全体で一番重要な役なんだけどね……」
「そんなこと、どうだっていいよっ! たとえ絵の中でも、お兄ちゃんが死んじゃうなんてやだよっ!」
800「はぁ……」

有友「久しぶりに僕が登場する絵で、しかも王者の役だというから、僕にふさわしいと思っていたら、狡猾な男に殺される役だと?」
静乃「ぐす……兄さん……」
800「あっちからもこっちからも文句ばっかりだな。題材的には気に入っていたし、絵の出来もけっこう会心の作だったんだが……」
知美「こういう悲劇が、気に入った題材だったんですか? ネットの友達を減らしますよ、こういう絵ばかり描いていると」
800「悲劇だから気に入ったんじゃない、劇的な場面が描けそうだったからだ。私だって、すき好んで人が死ぬ場面、それも流血の惨劇を描いているわけじゃないぞ」
知美「まあ、そうかもしれませんけど……」
有友「僕が死者を演じることに、場面としての必然性があるというんなら、納得できないでもないが…この腹の傷はあざとくないか?」
800「それも、場面としての必然性だ。そもそも絵とは、花鳥風月、美しい物ばかりを描くものではないと思う」
知美「アマチュアのCGサイトにしては、ずいぶん思い切った発言ですね、今のは。それで今まで、何かというとギャグに走ったり誰かを愚弄したりしてたんですか?」
800「何とでも言うがよかろう。作品を判断するのは私ではなく、サイトを見に来た人たちなんだから」
静乃「800さん、今度私たちを絵に描く時は、あまり悲しい場面を描かないで下さいね」

知美「館長、次回作の題材は何ですか?」
800「今のところ未定。まだ雪が降り続けるようなら、もう1枚くらい冬物を描いてもいいかと思うが」
知美「そういえば『同級生2』メインキャラのうちでは、永島さんの親子と野々村さんがまだでしたね」
800「そうだな。検討しておこう」
(2001.3.11)

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