『同級生2』より「西御寺有友」「杉本桜子」「龍之介(主人公)」、 同PlayStation版より「西御寺静乃」です。 | |||
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二人の入学式
語り:西御寺有友
今日は、八十八学園の入学式だ。 3年前の今日、僕も八十八学園の新入生として、入学式を迎えたのだ。 あれから3年。 もちろん僕は、もう八十八学園の生徒ではない。 つい先月、八十八学園を卒業し、第一志望の帝大理学部に現役で合格した。 同級生たちも、八十八学園を卒業し、それぞれの進路に進んでいる。 友美さんは、帝大薬学部に。 失恋をバネにして猛勉強し、最初の志望校よりさらに高いランクの大学に合格するとは、 さすがは友美さんだ。 同じ大学に通う友美さんとは、これからも良き友人としてつき合えるだろう。 唯さんは、如月看護短大に。 あの家を出て、寮に入ることにしたと、唯さんから聞いた。 唯さんも失恋を機に、心機一転を期しているのだろう。 唯さん、あなたならきっと、初志を貫徹できる。 いずみさんは、星城ヶ丘女子短大に。 高校時代は僕にあまり好意を持っていなかったらしいが、それは過去のことだ。 きっと いずみさんにふさわしい、良縁を見つけられるだろう。 可憐さんは、卒業と同時に単身渡米した。 単なる日本のアイドルにとどまらず、世界に通用するスターとして花開くために、自分の実力を試しに行くのだそうだ。 僕自身は、芸能界とは無縁な世界に生きる人間だし、庶民が自分をどう見ていようと気にしないが、 今の地位に甘んじないでさらに上を目指す志は、僕も持ち続けたいと思う。 南川さんは、自動車整備士の専門学校に。 高校時代にはとかくの噂があったが、彼女なりにきちんと将来を考えていたのだ。 川尻君とつき合うようになって、どことなく変わってきたような気がする。 いずれ、川尻君と結婚して、家業を継ぐのだろう。 加藤さんは、コンビニのアルバイトを続けているらしい。 彼女とは・・・いや、過去のことは振り返るまい。 川尻君は、体育大学に。 質実剛健を絵に描いたようなあの川尻君が、南川さんとつき合い始めたとは、最初は信じられなかった。 でも、「仲良きことは美しきかな」だ。川尻君と南川さんの様子には、庶民らしいほほえましさが感じられる。 長 岡のやつは、進学も就職もせず、ぶらぶらしているらしい。 まったく、あんなやつが同級生だったということが、将来は西御寺財閥総帥となることを予定された僕の、人生の汚点にならなければいいが。 いや、もっと心配なのは、あいつが友美さんの人生の汚点になりはしないか、ということだ。 友美さんは、僕の再三の忠告にも耳を貸さず、あいつとつき合っている。 同情なのか。世の中には同情するに値しない人間もいる。 矯正なのか。世の中には矯正するに値しない人間もいる。 友美さん、聡明なあなたがなぜ、あんなやつのために人生を浪費しているのか。 そしてもう一人、あいつ・・・。 「兄さん。何か考え事ですか」
静乃の声で、僕は我に返った。 今日、僕がここに来たのは他でもない、静乃の入学式に参列するためだ。 父さんは多忙のため時間が割けず、静乃の母さんは折悪しく体調を崩してしまった。 それで、帝大の入学式にはまだ日があった僕が、静乃に付き添うことになったのだ。 「桜がきれいですね、兄さん」
「ああ・・・静乃、嬉しそうだな」
「だって、兄さんと同じ高校に通えるんですから」
僕は思わず苦笑いした。 同じ高校といったところで、僕はもう卒業してしまったというのに。 ・・・「兄さんと同じ高校に通える」・・・。 唯さんは、八十八学園に転入した時、美佐子さんに言ったそうだ。 「お兄ちゃんと同じ高校に通える」と。 あの時 唯さんは、どんな思いでそう言ったのか、僕にはよくわかる。 だが、唯さんと「お兄ちゃん」の関係は、過去の物になった。 だからもう、あいつのために心を煩わすことはやめよう。 唯さんが将来を託す男は、あいつではない、この僕、西御寺有友なのだから。 語り:龍之介
今日は、八十八学園の入学式だ。 3年前の今日、俺も八十八学園の新入生として、入学式を迎えたんだ。 あれから3年。 実は俺は、まだ八十八学園の生徒をやってる。 いろいろ考えるところがあって、自主留年したんだ。 美佐子さんも唯も、大反対だった。 親父は、「お前の人生だから、お前が考えて決めたことなら反対しない」と言ってくれた。 でもその次に、「4年目の学費は卒業後に働いて返せよ」ときた。きついぜ親父。 片桐先生も、最後には納得してくれた。 同級生たちは、八十八学園を卒業し、それぞれの進路に進んでいる。 友美は、帝大薬学部に。 冬休み明けから猛勉強して、最初の志望校よりさらに高いランクの大学に合格するなんて、 俺への当てつけかと思うけど、やっぱり友美はすごいぜ。 同じ大学に通うことになったって、西御寺のやつが吹聴してるけど、それは友美の努力だろ。 やつの手柄じゃないんだ。勘違いするなよ。 唯は、如月看護短大に。 あの家を出て、寮に入ることにしたんだと、美佐子さんから聞いた。 唯のやつ、あの日以来、俺とは口も聞かないし、顔も見ようとしない。 唯にとっては、俺とはもう、全てが終わったんだろうな。 まあ、せいぜい頑張って、看護婦になれよ。 いずみは、星城ヶ丘女子短大に。 いわゆるお嬢様学校、花嫁修業学校ってとこだ。 そんな学校に行って、お嬢様とつき合いながらどこぞのおぼっちゃまとの縁談を待つなんて、 あの いずみがそんな学生生活に耐えられるのかな。 俺とは結局、悪口友達で終わったけど。 可憐ちゃんは、卒業と同時に一人でアメリカへ行った。 単なる日本のアイドルにとどまらず、世界に通用するスターとして花開くために、自分の実力を試しに行くって言ってたけど、あの鬼マネジャーから離れたかったってのも、本音かもしれないな。 洋子は、自動車整備士の専門学校に。 不良呼ばわりされてたけど、ちゃんと自分の将来を考えてたんだ。 あきらとつき合うようになって、少し女っぽくなってきたような気がする。 いずれ、あきらと結婚して、バイク屋を継ぐんだろう。 みのりちゃんは、コンビニのアルバイトを続けてるらしい。 始業式の日の、西御寺の顔は見ものだったぜ。 あきらは、体育大学に。 柔道とテレビにしか興味のなかったあの あきらが、洋子とつき合い始めたとは、最初は信じられなかった。 でも、似合いのカップルだと思うぜ。 芳 樹のやつは、進学も就職もせず、ぶらぶらしてるらしい。 ・・・高校4年生になった俺が、言えた義理じゃないか、ははは。 ただ、心配なのは、あいつが友美の人生をぶち壊しにしないか、ってことだ。 友美は、俺の再三の忠告にも耳を貸さず、あいつとつき合っている。 同情? あんなやつに同情する必要はない。 矯正? あんなやつは矯正したって直りゃしない。 友美、あんなに頭のいい友美がなんで、あんなやつのために人生を浪費してるんだ。 そしてもう一人。天道は、愛美さんに振られたショックで入院したまま、3月限りで退職した。 俺を学園から追い出すつもりが、自分が学園から逃げ出したんだ。せいせいしたぜ。 唯とは終わった。友美も俺から離れた。いずみとは友達のままだった。 だけど俺には、かけがえのない、大切な人ができた。その人とは・・・。 「龍之介君。何か考え事してたの?」
桜子ちゃんの声で、俺は我に返った。 今日は授業がないのに、俺がここに来たのは他でもない、桜子ちゃんに会いたかったからだ。 桜子ちゃんは病気がすっかり治って、この春、3年遅れで八十八学園に入学することになった。 それまでの間に、俺の決心が固まったんだ。 何年かかってもいい、命がけで勉強して、医者になろう、と。 自主留年することにしたのも、もう一度やり直そうと思ったからだ。 ・・・それだけじゃないけど。 「桜がきれいね、龍之介君」
「桜子ちゃんの方が、もっときれいだよ」
「やだ龍之介君、恥ずかしい」
「ははは・・・桜子ちゃん、嬉しそうだね」
「だって、龍之介君と一緒に高校に通えるんだもの」
俺は思わず苦笑いした。 本当は俺の方が、桜子ちゃんと一緒に高校に通いたくて、自主留年したみたいなものだからさ。 ・・・「龍之介君と一緒に高校に通える」・・・。 唯は、八十八学園に転入した時、美佐子さんと俺に、聞き飽きるほど言った。 「お兄ちゃんと一緒に高校に通える」と。 あの時 唯は、どんな思いでそう言ったのか、俺にはよくわかる。 だけど、唯と俺の関係は、過去の物になった。 冬のあの日以来、唯は西御寺とつき合い始め、ことあるごとに見せつけている。 唯のことはもう、どうでもいい。俺には桜子ちゃんがいる。 寄り添って歩く、二組の男女。 やがて・・・。 「あれは?」
「あいつは・・・」
「あの人は!」
「えっ・・・?」
「龍之介さん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 西御寺萌えサイトとして知られ、根強い固定客(私もその一人)を持つサイト「桂芳恵精神病棟」への寄贈CGです。これも前の寄贈作「三年後」と同様、99年のうちからシチュエーション先行で構想があったCGで、季節的に「三年後(3月)」に続く、4月限定題材のCGとして制作しました。 知美「所長、八十八学園の入学式って、旧暦の4月でしたか?」 ……いきなりのツッコミ。そうです、サイトを開設してからというもの、サイトの更新の方に熱中してしまって、CGの制作がすっかり遅れてしまいました。本来入学式の時期である4月上旬の完成は無理でも、せめて4月中には、と思ったのですが、完成したのは5月3日です。 有友「まあまあ知美さん、800君を責めないでくれたまえ」 知美「西御寺君、ご機嫌ね」 有友「もちろんさ。今度も800君は、僕と唯さんが結ばれるという設定で文章を書いてくれた。僕は第一志望の帝大理学部に現役で合格したことになっているし、これ以上何も望むところはない」 800「そりゃ、贈り先に喜ばれるCGを描くのが、私のモットーだからね」 龍之介「ちっ、あんまり有頂天になるなよ、ボンボン。 800さん、ボンボンの笑い顔が気に入らないな。どういうつもりで描いたんだよ?」 有友「言わずもがなだ、アホ。僕は帝大に現役で合格し、唯さんの愛を勝ち得た。貴様はどうだ、落第した挙句、唯さんにも友美さんにもそっぽを向かれた。公私ともに、僕は貴様に勝ったのさ。勝者の余裕だよ」 龍之介「ボンボン、文章をよく読め。俺は落第じゃなくて自主留年だ。それに、俺には桜子ちゃんがいる。『……黙れ、唯だけが女ではないさ』」 有友「ふん、どこかで聞いたような台詞だな」 龍之介「全国何万人もの唯萌えの前で、お前が吐いた負け惜しみだぜ、ボンボン」 有友「ふふん、負け惜しみはアホにこそよく似合う」 龍之介「……!!(-_-メ)」 有友「ほう、暴力に訴える気か? それでこそアホだ」 龍之介「!!!(`ヘ´メ)」 桜子「龍之介君、暴力は止めて!」 静乃「兄さん、言葉の暴力は拳の暴力より悪いです!」 知美「所長、あの二人を一緒に呼んだのは間違いだったような気がします……」 800「……というわけで別々にコメントしてもらうことにした。まず有友から」 有友「僕はこの絵にも文章にも、大いに満足している。特に言うことはない。強いて言えば、うちの院長のコメント待ちかな」 800「それはよかった。文章が長すぎないかと思ったんだが」 有友「いっそ、SSとして書いてみたらどうかな。うちの病院も、文章系の新着コンテンツが途絶えて久しいから」 800「うーん、桂さんの文才には及ばないから……」 有友「無理にとは言わないが。次回作はどんな題材になるのかな?」 800「……それが、これでネタ切れ。有友が他の大勢と一緒に登場するネタはあるんだが、静乃と二人だけで出演するCGは当分描けそうにない」 静乃「…………(じわっ)」 800「あっ、ごめん、静乃。何とかネタを考える」 静乃「いいえ、すいません、お気を遣わせてしまって。 あの、私は、オリジナル(PlayStation版)のエンディングでは、八十八学園に入学することになっていたんですか?」 800「いや、それは知らない。ついうっかりして、桂さんに問い合わせるのを忘れたんだ。だから静乃が八十八学園に入学するというのは、この作品を作るために私がこしらえた設定だ、正直に言うと。 だけど、八十八学園は有友の母校だし、そんなに不満はないと思うが?」 静乃「はい。兄の母校に入学できて嬉しいです」 800「うんうん」 800「さて、有友と静乃が帰ったところで、龍之介と桜子の番だ」 龍之介「ああ、せいせいした。ボンボンがいると、空気がコロン臭くって参るぜ」 桜子「龍之介君ったら……」 龍之介「800さん、悪かったな。さっきはむかついちまって」 800「いや、龍之介の扱いに関しては、私の作品の中でも問題がある作品だとは思っていたから」 龍之介「どこから、俺が自主留年するって思いついたわけ? こずえちゃんエンドから?」 800「いや、ShinさんのSS『そして、ふたたび・・・』からだ。途中経過はだいぶ違うんだけどね」 桜子「そのお話でも、龍之介君はお医者さんになろうと決心するんですね」 800「そうだ。龍之介が医者に、桜子が看護婦になる桜子エンドは、ゲームの中では私は一番気に入ってるんだ」 龍之介「桜子ちゃん、俺、必ず医者になって、病気の子供を救ってやるからな」 桜子「うん、龍之介君なら、きっとできるわ。私も応援する」 龍之介「そうなったら、ボンボンを見返してやるぜ」 桜子「龍之介君……」 800「龍之介が医者になるSSって、けっこうあるからな。頑張れよ」 桜子「800さん。私の絵を描いたのは、これで5枚目ですね。いっぱい描いてくれてありがとう」 800「どういたしまして。いつの間にそんなに、って気がするけどね。 桜子は、SSの一場面みたいな、絵になるシチュエーションが思い浮かびやすいんだ」 桜子「『風の中に消えた』は、SSの一場面そのものですね」 800「ああ、あれはね。桜子がヒロインのSSには、名作がいくつもあるしね」 桜子「これからも、頑張って下さいね」 800「さて……? 何だ、この険悪な雰囲気は?」 知美「所長……」 800「何だ、知美か。……う、顔が蒼白いぞ。どうしたんだ?」 知美「八十八学園を卒業後の水野さんが、誰とつき合っているか、については、 言いたいことは山ほどありますがっ、敢えて何も言いませんけどっ!」
800「な、何だよ……」知美「いつになったら、水野さんの絵を描いてくれるんですかっ!?!」 800「ああ、そ、その事か。わかった。 宣言する。この次の作品は友美のCGだ。連休中に仕上げる」
知美「本当ですね?」800「ああ、題材も決まったし、資料集めも済んだ」 知美「あとは、『禁・○○○』を守れるかどうかですね」 800「……またそれを言う……」 (2000.5.3)
補足
「桂芳恵精神病棟」は、2004年11月19日限り、閉鎖されました。長い間のご厚誼に感謝いたします。
(2004.11.19)
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