『日溜まりの中で』
日溜まりの中で
『ToHeart』より「HMX-13セリオ」「HMX-12マルチ」『Piece Of Heart』より「田沢圭子」です。
「ToHeart」のヒロインの誕生日に合わせた連作の第8作です。
ToHeartに登場する女性キャラたちには、メイドロボの試作機にも“誕生日”が設定されていて、セリオことHMX-13は3月12日、マルチことHMX-12は3月19日が誕生日となっています。
いわゆる生き物ではないメイドロボが起動された日を「誕生日」と呼んでいいのかどうかはあまり深く考えないことにして(例えば船の進水式の日を「誕生日」と表現したとしても、それほど奇異には感じられないと思います)、誕生日連作の一環としてセリオとマルチの絵を描くことを思い立つとほぼ同時に、この2キャラは1枚の絵に一緒に描くことに決めました。
第5作に描いた来栖川芹香と宮内レミィ、第6作に描いた松原葵と来栖川綾香と同様、セリオとマルチは誕生日が接近しているのがまず実際的な理由ですが、それだけではありません。
制作元Leaf=アクアプラスによるセリオとマルチの描かれ方を見ると、ゲーム本編でも、ゲームより後に制作されたCDドラマ「Piece Of Heart」でも、同じ企業の同じ研究所で同じ時期に開発されたメイドロボとしての共通点が描かれると同時に、設計思想の違いに由来するセリオとマルチの差を対照的に描き出す、見方によっては違いの方を際立たせて強調するような描き方がされていると思います。ロボットとしての仕様・性能だけでなく、例えば外見一つとっても。
そのように、根本的な所ではいくつもの共通点を持ちながら、それ以上に相違点が際立っているコンビという点で、セリオとマルチは典型的な「絵になるコンビ」、もっと正直に言えば「絵に描きやすいシチュエーションがすぐに思いつくコンビ」だろうと思います。

この連作では第1作以来、メインヒロインと関わりのある女性サブキャラをなるべく網羅することも重要な目標にしてきました。
そもそもセリオとマルチを一緒に描くのなら、マルチが絵の主役、セリオはマルチに対するサブキャラという位置づけもできるわけですが、どちらかというとマルチよりもセリオに心惹かれるところのある私としては、今年に入ってから2作続けて(この連作の第6作ともう1枚)来栖川綾香に対するサブキャラとして描いたセリオを、今度こそ主役として位置づけたいという思いがあります。
といってマルチを「セリオに対するサブキャラ」と言い切るのもマルチを蔑ろにしている気がしますから、セリオとマルチの両方をメインヒロインと位置づけ、彼女たちの相方として描くサブキャラは他に探すことにします。
セリオand/orマルチと関わりのある女性サブキャラとして候補に挙がったのは、セリオが主役を演じたCDドラマ「Piece Of Heart」でセリオの相方を演じた新キャラ、田沢圭子です。
圭子は、セリオがテスト通学している学校の同級生です。Piece Of Heartだけに登場するキャラであるために知名度が高くないのか、インターネットではほとんどCGを見かけませんが、れっきとしたオフィシャルキャラ(聞くところではフィギュアも発売されたという)、しかも私が今まで描いたことのないキャラです。
幸いなことに私の手許には数年前に中古ショップで入手したPiece Of Heartの現物があるので、設定に関する資料の問題はありません。私以外のCG画家たちによって描かれたことが少なければ少ないほど、私が描いてやることに意義がある、という思い込みに衝き動かされるまま、圭子を描くことに決定しました。

今回描いた場面は、ゲーム本編やPiece Of Heartにある場面ではありませんが、だいぶ前に、ToHeartをやり込んでいるお知り合いの人とチャットしていて思いついた場面です。
ゲーム本編では、来栖川電工のメイドロボの主たる動力源はリチウムイオン電池で、補助動力源として燃料電池を搭載しているという設定になっていましたが、近未来の社会でメイドロボが普及に移される際の重要な問題として、そのような社会でメイドロボの主たる用途として想定されているであろう用途、具体的には要介護者や独居老人世帯の巡回介護に従事しているメイドロボが、単独行動中に電池切れで稼働不能に陥りでもしたら、被介護者の生命に関わりますから、動力源に関しては何重にもフェイルセーフを設けておく必要がある、などと真面目くさって発言しているうちに、メイドロボの補助動力源として「外付け式太陽光発電装置」の運用試験をしている場面というのを思いつきました。
晴れた日の昼下がり、公園のベンチでメイドロボが、膝掛けを掛けて日向ぼっこをしている──と傍目には見えますが、膝掛けに見えるのは導電性プラスチックなどの新素材を使った高性能な次世代型太陽電池で、空き時間に太陽光を利用して充電しているところ、ということになります。そのような場面の中で、セリオとマルチの対比をなるべく強調するように描いたのは、第5作で芹香とレミィの対比を強調して描いたのと同じやり方です。

昨年秋から続けてきたToHeartキャラの誕生日連作は、これで誕生日が設定されている女性キャラ全員を描き終えたことになります。次に描くのは──
ちょうど1年前の今頃「受難三部作」が完結したとたん、3ヶ月間にわたって絵の制作が停まってしまったために、春から夏にかけての季節物の絵の構想ばかりが山積みになっていますが、あまり気負わずに描いていくことにします。
(2005.4.30)

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