『平和を実現する人々』
平和を実現する人々
『ToHeart』より「宮内レミィ」『同級生2』より「水野友美」です。
暑中見舞として制作・公開した前作に続き、夏という季節に題材を得て制作したCGです。
昭和20年8月15日に大東亜戦争終結の詔勅が渙発されて以来、8月15日は「終戦記念日」とされ、国を挙げて戦没者を追悼する日となっていることは、日本人であれば誰でも知っていることと思います。終戦から半世紀以上の星霜を経て、大東亜戦争を直接体験した人が少なくなった今日でも、私たちの祖国が過去に戦争の当事者となったという事実は、世代を経て未来永劫に記憶され、受け継がれなければならないと思います。
しかしそれは、単に過去の追憶に耽ることや、目の前の現実から目を逸らし続けることであってはならないと思います。ただ単に戦争が起きないことを願い望み、口で唱えるだけではなく、現実に戦争が起こってしまったら、いかにしてそれを終結させ、迅速かつ確実に平和を回復するか、そのために実効性のある具体的な行動として、誰に(どの組織に)何ができるか、それを真摯かつ冷静に考えることが、私たちの責務であると思います。
折しも2004年の夏には、イラク戦争の戦後復興に協力するために、イラク領内に陸上自衛隊が派遣され、陸上自衛隊を支援するために海上自衛隊と航空自衛隊が派遣されています。そのことと、個人的に夏の恒例行事である夏コミの最終日が今年は8月15日すなわち終戦記念日と重なることから、もし残暑見舞CGを制作するなら、終戦記念日からもう一歩踏み出した題材で制作しよう、と考えました。
題材を思いついたのは8月初頭でしたが、制作に着手したのは夏コミから帰ってきた後で、終戦記念日に合わせて制作すると言うには遅くなりすぎてしまい、8月末になってようやく完成しました。

レミィ「ハァイ! トモミ!」
800「こらこら。プライベートとはいえ、二人とも階級章をつけた制服を着ている以上は、階級が上の者に対してアメリカ合衆国の海軍士官が取るべき態度があるだろう、宮内少尉?」
レミィ「ハッ? …失礼イタシマシタ、ミズノ大尉、No、ミズノ一尉!(敬礼)」
知美「はい。(答礼)楽にして結構です、宮内少尉」
800「よろしい。二人とも、なかなか 様になっているな」
レミィ「光栄でアリマス、…エーと…」
800「ああ、敬礼は結構、私は文民だから」

知美「さて館長、物議を醸しそうな題名とシチュエーションについて、説明してください」
800「うん。シチュエーションとしては、海上自衛隊横須賀基地に勤務する一等海尉である友美が、終戦記念日に靖国神社に参詣したところだ。水野一尉が手に持っているのは、靖国神社に祀られている祖父の遺影だ。
 ここからは独自設定。水野一尉の祖父が靖国神社に祀られているのには訳があって、大東亜戦争の時に帝国陸軍の軍医として外地へ出征したが、戦争中に重症の戦傷病の捕虜を安楽死させたとして、戦後の軍事裁判でBC級戦犯として処刑されたからだ。それで、代々医師を家業としてきた水野家では、軍医になったために医師としての道──人の命を救うことだな、それに背く結果になってしまった祖父のことは、戦後ずっとタブーになっていた。
 それから半世紀を経た今、医師になった友美は、一族の反対を押し切って、自衛隊に入隊して医官になった。任官から数年間、世界各地の戦後復興支援や、大規模災害に際しての人道支援に参加して、多大な功績を挙げている。
 水野一尉は確信している。祖父のような人々を尊い礎として築かれた今の日本でなら、自衛隊に医官として奉職することが医師としての道に背く結果になることはないと。なぜなら自衛隊は、侵略戦争をするための軍隊ではなく『平和を実現するための軍隊』だということ、だから自衛隊に奉職する自分は『平和を実現する人々』の一員だということを、一点の疑いもなく信じられるからだ」
知美「……いきなりディープな設定をするかと思えば、自衛隊の広報にも載せられそうにないほどクサい台詞を素面で言ってみたり……館長、暑気あたりですか?」
800「何を言うか。それで続きだが、一緒に靖国神社に来た宮内少尉は、大学を卒業してアメリカ海軍に入り、海軍少尉として任官してからすぐ、日本語に堪能なのを買われて、アメリカ海軍横須賀基地の広報担当官になった。職務柄しばしば海上自衛隊の横須賀基地に行っているうちに、そこに勤務している水野一尉と友達になった、という設定だ。
 宮内少尉の場合も──これはアメリカ本国でも賛否両論かもしれないし、まして日本でこんなことを言うと圧倒的な反発を食らいそうなんだが、日本の自衛隊よりももっと積極的に『平和を実現する』、その手段として『国際平和に対する脅威となりうるものを排除する』能力を持っている世界で唯一の組織、それこそ取りも直さずアメリカ軍だな、アメリカ軍に属する宮内少尉は、水野一尉と同じく『平和を実現する人々』の一員であると言えるのではないだろうか」
レミィ「ワタシたちU.S. Armed Forces(アメリカ軍)の使命と任務に、これほどに高い評価と深い理解を頂いたことに、心から感謝イタシマス」
800「というのの他に、『ToHeart』のメインキャラの中では、レミィはまだ原画から描いたことがなかったから、というのも、今回レミィを描いた理由なんだが。実を言うと志保もまだ描いていないから、アメリカ軍や自衛隊を取材している、レミィと知り合いのフリージャーナリスト、という役どころで登場させてみてもよかったかもしれないな」
レミィ「それは Good idea でしたネ。実現しなかったのは残念デス」
知美「本当ならもっと早く、長岡さんを描いていたはずだったんですよね。5月の連休に公開を予定しているって言ったのは、いつでしたか?」
800「……うぐぅ」
(2004.8.29 2004.9.23コメント訂正)
補足:
公開当初の題名は「平和を創る者」でしたが、9月23日に一部修整した新版を制作した際に「平和を実現する人々」と改題しました。旧版は、ここに移してあります。
(2004.9.23)

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