番外日記
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2001年12月2日(日)
まずマナについて。最初は家庭教師に来た冬弥を「監視役」と言い放つほど素っ気ない態度をとっていますが、両親はほとんど家にいたことがなく、母親が学校と対立しているために学校でも居場所がないと思い込んで友人を遠ざけているという、寒々とした孤独の中にいることが次第にわかってきます。強がりは孤独の裏返し。その孤独の中で数少ない心の拠り所が従姉妹と、それからマナが徐々に心を開いていく冬弥なのですが、最後に明かされる事実はマナにとっては痛いです。なぜなら従姉妹は森川由綺──つまりマナが好きになった冬弥は由綺の恋人だったから。
このゲームのシナリオの特徴として、美咲、はるか といった由綺以外の女性は冬弥と由綺の関係を知っていて、それ故に苦悩が深まっていくという面があると思うのですが(特に美咲の場合)、マナは冬弥と由綺の関係を知らないままシナリオが進んできて、最後に突然それを突きつけられるだけ、衝撃はさらに大きいと思います。由綺の前から逃げ出したマナを追ってきた冬弥に、マナが投げかける言葉は、由綺を裏切りたくない想いが痛切です。そしてエンディングでも、一人で何かを成すまでは冬弥と由綺の前には姿を現さないと宣言していく。いつか成長したマナが再び冬弥の前に現れた時、新たな物語が始まることでしょう。
しかし不思議だったのは、恋愛ドラマの王道をゆくような痛いシナリオだったはずなのに、プレイしている私はそれほど痛く感じなかったことです。初プレイでの美咲シナリオのあまりの痛さに、感覚が麻痺してしまったのでしょうか。

次に弥生ですが、今までプレイしたどのゲームの誰とも全く異なる女性です。由綺の前進の足手まといになる可能性のある一つの物としてのみ冬弥を見ていて、身も蓋もない言い方をしてしまうと冬弥の性欲の処理を自ら買って出る経過は、冬弥をして畏怖から思考停止にまで追い込むほどで、これも他のシナリオとは違う意味で、プレイし続けるのが辛くなるほどでした。
そういう弥生が、実は冬弥を本当に愛し始めてしまっている自分自身に気づいて、由綺と冬弥の間で苦しみ始める──という流れを想定していたのですが、そうはならないまま終わったように見えます。でもエンディング直前で
「…私、あなたのこと…本当は愛していたのですよ……本気で…/…嘘…ですけどね…」
と言ってのけた弥生に、冬弥も
「…俺だって、同じくらい愛してましたよ…。弥生さんのこと…/俺も…/全部…嘘…でしたよ…」
と応酬するあたりに、子供が主人公である普通のギャルゲーとは違う世界を見ました。
漠然と感じていたのですが、弥生という女性が由綺に対して抱いている感情は、このゲーム世界の中で最も深い愛情ではなかったかと思います。由綺の才能を見出し、それを大きく開花させるためには、いかなる自己犠牲も厭わない、慈母の愛に似た性質の愛情。クリスマスイブのライブの後で緒方英二が冬弥に、弥生を評して「直情的な人」と言っていた理由が、冬弥にはわからなかったのかもしれませんが、私には少しだけわかったような気がしました。
(12月3日アップ)

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