静夜思 李白 牀前看月光 牀前月光を看る | |
『同級生2』より「杉本桜子」です。 |
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右上に掲げたのは、李白の有名な漢詩「静夜思」です。季節は晩秋から冬の候でしょうか、旅路の一夜、ふと目を覚ますと、枕辺に白々と冴えた月光が射し込んできていました。山の端に昇った月を見ていると、遠い故郷が思い出されて……。古今東西、異郷の地で過ごす夜は、望郷の念をそそるもののようです。 800「桜子の場合は旅路じゃないけど、でも自分から望んで旅に出て故郷を離れたのではないからこそ、いっそう望郷の想いが募るんじゃないかな」 桜子「うん……。でも八十八市民病院は、私の住んでいた町からはそんなに遠くなかったから、お母さんはもちろん、中学の時の友達もよくお見舞いに来てくれたわ。だから私よりも、都会から遠く離れた『森の診療所』に長い間入院している人たち、つばさちゃん、神楽さん、白風ちゃんの方がもっと、故郷を懐かしがるんじゃないかしら」 800「ああ、それは考えた。だけど桜子より年下の(昨今いろいろとうるさいから年齢は明示してないけれど、つばさは明らかに18歳未満のはず)つばさや白風が李白の詩を知っているとは思えないし、読書家で古典に造詣の深い琴羽だったら知っているかもしれないけれど、彼女の場合、実家や郷里、特に両親に対して抱く感情は、単なるホームシックとは違うかもしれない──などと考え始めたら、誰を描いても一長一短で、数日考えあぐねて、結局その3人の誰にするとも決められなかったんだ」 桜子「難しいのね……」 800「それに、flutter of birdsキャラを描きたくなかったわけじゃないが、それよりも『桜子を描きたい』というもっと明確な目的があって、最終的にそれが勝ったんだ」 桜子「…………」(うるうる) 800「実はね、先頃いずみを描いたのも動機は同じなんだが」 桜子「……???」 (2002.11.4)
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