下級生リレー小説:制作余話
制作 2000年10月1日〜

・第63話 「雨降って地固まる」
リレーSSも開始から半年が経ち、回数としては60回を超えました。当初の予定がゲームのプレイ期間と同じ1年間であるならば、そろそろ終盤に向けての収束の方向性を議論し始める、つまりいつまでも けんたろうが周り中の女の子と当たり障りのない恋愛ごっこを続けていてはいけない、という時期にさしかかってきます。
そこで、前回私が担当した第55話を受けた第56話そこつやさんの回で、けんたろうと真歩子を軸に真由美とティナが絡む情念の世界が、そこつやさんらしい見事な筆致で描き出されましたが、その次の第57話天巡 暦さんの回から、驚くべき新展開が始まりました。
詳しくは「そこつやの館」でお読みいただくとして、天巡さんの提示した新展開は第58話ぶらぢるさんばさんに引き継がれた後、第59話さんの回で、けんたろうとその周りの女の子たちに次々に災厄が襲いかかるという、まさに恋愛ドラマの王道とも呼ぶべき形を成してきました。第60話なりぽしさんの回は、その延長上にあります。
すさんの回を読んだ私の頭に、まさにそのパターンに当てはまる、元のゲームにあった秋の一大イベントが閃いたのは、当然の成り行きと言えるでしょう。というより、最後までそれしか思いつかなかったのが正直なところです。
それがすなわち第63話、涼子の描いた絵が駅前で暴走車に轢かれてしまうという題材ですが、私がまず心配したのは、私の回までに誰かがその題材を使ってしまわないか、でした(笑…い事ではなく本当に)。
幸いにして第61話ゼロさん、第62話雅丸さんの回でその題材が使われてしまうことはなかったのですが、4月12日の夜に投稿された雅丸さんの回は、まさに「下級生リレーSS 秋の部」のクライマックスと呼んでも差し支えない力作でした。
私の文才では、これに続く文章を書くことは到底できません。その点は、雅丸さんの回で1つの大きなストーリーが完結したことにして、私の回から新しいストーリーが始まることにすればいいと割り切ってしまいました。
しかしもう一度、天巡さんの回から後を読み直してみると、私のプロットでは、天巡さんの回で提示されたティムの役柄があまりにも矮小化し、それこそ一昔前の子供向けコミックスに出てくる「小悪党のボス」のレベルに堕してしまう気がしてきました。
といって雅丸さんの回の続きを書く力量はないのは事実なので、悩んでいるうちに時間が過ぎて、投稿期限である15日の、朝になっても1文字も打鍵していない状態でした。
しかも元のゲームのイベント場面はうろ覚えだったので、セリフを書き取るためにDOS版をプレイしてみようとすれば、DOSゲーム用のマシンが故障しています。
こうなったら元のゲームのイベント場面とその後の成り行きなど無視して書くと決心します。ですから元のゲームで傷心の涼子が立ち直ったのには、けんたろうが暴走車の運転手をしばき倒して涼子に謝らせたことが一つの動機になっていたと覚えていますが、けんたろうの介入に関わりなく、涼子が自力で立ち直ったことにして打鍵しました。その方が自信家の涼子にふさわしいと感じたからでもあります。
終わりの方で涼子が言う長いセリフ(第20話と同じパターンですね)にある「イギリスの歴史家」の話は、内村鑑三の講演録『後世への最大遺物』(岩波文庫)で述べられているトーマス・カーライルの逸話です。涼子には、3年C組随一の教養の持ち主、そしてその教養を実生活に活かせる意志の持ち主であってほしいと私は思いました。
それから余談ですが、今回はかなりシリアスな場面の後だったので、随所でふざけています。他のゲームからネタを引用したのが2箇所ありますが、おわかりになった方には、言うまでもないでしょう。
(2001.4.16)

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