下級生リレー小説:制作余話
制作 2000年10月1日〜

・第44話 「花火と流れ星」
リレーSSの担当も4回目になりました。季節としては、まだ夏休みが続いている状態です。
私の前を担当するふりんとぶらっくさんは、次の担当者にストーリー上の制約をなるべく課さないように、ご自分の回でエピソードを完結させるのを流儀としている人らしく、私は今回もストーリーの制約が全くない状態からプロットを立てることができました。ストーリーの制約はなし、しかも抱腹絶倒の第43話の結果として けんたろうの懐は暖かい、という願ってもない好都合な条件です。
夏休み終盤、一夏の思い出を作るようなイベントとなると、いろいろ考えられます。元のゲームにあるところでは指切り神社の夏祭り(元のゲームでは8月25日)。けんたろうが同級生を誘って行くなら、海水浴は王道でしょう。学園物コミックの夏休みの定番、「校舎で肝試し」も面白そうです。「リフレインブルー」ばりの臨海学校……はリレーでは分量的に無理に決まってますが。
それと私の嗜好として、夏は女の子に水着を着せるよりも浴衣を着せたい、特に元のゲームでは軽犯罪法違反な服装をしているティナを何とかしたい、という意図がありました。
そこでまずシチュエーションを「夏祭り」に決定し、指切り神社の夏祭りよりも大規模な夏祭りが八十八町で開かれ、けんたろうが同級生を誘ってその祭りに行くことにしました。それはもちろん、今度もまた同級生2キャラ、もっとはっきり言えば友美を登場させるためです。
夏祭りのメインイベントとして花火大会を持ってきたのは、私の郷里長岡市の夏祭りをイメージしています。長岡市の花火大会は毎年8月2日と3日の夜、信濃川の河川敷で行われ、その時には信濃川の堤防に桟敷が作られます。ですが八十八町は海岸があるのですから、花火大会の会場は海岸にしました。リレーSSの開始以来初めて、8月18日という明確な日付を定めましたが、これは単なる駄洒落です。ただ、元のゲームでの日付と曜日の関係も、8月18日が日曜日なので、この点は特に問題化しませんでした。
卯月学園関係の参加者は、まず けんたろうは当然ですが、第42話そこつやさんの回で けんたろうと瑞穂と みこがガーデンプールに行って大チン事を起こすというエピソードが書かれたので、けんたろうとしては汚名返上のために瑞穂と遊びに行きたいはず、ですから瑞穂も当然参加です。それと けんたろうに祭りに行くことを持ちかける役としてティナ。ティナには浴衣を着せます。元のゲームでは元日にティナが瑞穂から振袖を借りて着ることになっているので、浴衣も瑞穂から借りて着付けをしてもらうのが順当でしょう。ですから冒頭はけんたろう、ティナ、瑞穂の3人で駅へ向かう場面、というところまで決まりました。
それから元のゲームで夏祭りの時に浴衣姿が見られる涼子。涼子は夏祭りの間も、スケッチブックを手放しません。瑞穂を参加させるなら、今までリレーSSで出番が少なかった みこも外せません。言い出しっぺは、お祭り好きそうな稔。ここまできたら卯月学園3年C組総出演ということで真由美。麗子はリムジンで行って現地で合流することにするつもりです。さすがに、塾に缶詰になっていそうな慎二は見送りましたが。
ところがここで一つ問題が生じてきます。元のゲームの設定では、みこは門限が午後5時なので、夜になってから開かれる花火大会に行くことができません。それを解決するために、みこの父が同伴するという案も考えてみました。しかし少し打鍵してみて、これではあまりにも雰囲気(けんたろうが感じる)が悪くなりすぎると判断して、この案は廃棄しました。
代案ですが、要は みこの父が みこの夜間外出を認めるような人物が同伴していればいいわけですから、担任でないとはいえ卯月学園の教師である静香が引率するなら、みこの父も文句はないだろうと判断して、静香を登場させることにしました。ここはやはり、静香にも浴衣を着てもらいましょう。
総出演というなら、で奈々(元のゲーム通り浴衣着用)とティムも途中で合流させます。実はティムはこれが初登場です。言い出しっぺの稔はドタキャンと見せかけて、実は美夏と抜け駆けして現地で鉢合わせという仕掛け。
ここまでで名前の出ていない下級生の女性キャラは? 真歩子、美雪、愛、麻紀。
真歩子は後で述べます。美雪と愛は、大勢揃って祭りに行くと決めた時点で、出演させないことにしました。この2人が けんたろうと一緒に夏祭りに行ったら、花火ならぬ火花が2人の間に飛ぶのはわかりきっています。そこからじめじめしたストーリーが始まるのは真っ平御免です。
麻紀は……夏祭りとなったら神輿ぐらい担ぎそうですが、打鍵中は存在を忘れていました、すみません。
対する八十八学園関係で登場するのは、まず いずみです。篠原家の名前で桟敷を予約し、麗子に卯月学園関係者を招待するように持ちかけ、いずみ自身は八十八学園の友人(つまり友美)を招待した、というイメージです。ですから一同揃った席でも、いずみが場を仕切ります。
しかし八十八学園関係者の中心たるべき竜之介と唯は、ここには来ません。元のゲームの時系列的にはちょっとおかしいのですが、リレーSSの世界ではこの2人はもう公認の仲になって2人でべったりしているらしいので、いずみはそんな2人を招待したくなかったということにします。
そしてここからは、元のゲームで夏祭りの時や夏休みの間に発生するイベント(ただし私が元のゲームで見て知っている分)、リレーSSの今までの回で八十八学園関係者が登場したイベントの総集編です。リレーSSに八十八学園関係者として初登場の栄誉を担った西御寺も登場してはいますが、その姿は我ながら哀れです。もっと扱いが粗略なのは晴彦ですが。けんたろう、いずみ、友美の会話で竜之介が噂される時、いずみと友美の想いはいかばかりでしょうか、短い台詞ですが、非唯萌えとしての私の想いが吐露したと思います。
打ち上げ花火の音を、打ち上げ地点のすぐ近くと、何キロも離れた場所とで聞いたことはあるでしょうか。八十八海岸で揚がっている花火の音を何キロも離れた場所で、海岸の観客たちとは全く違う想いを胸に聞いているキャラ。それが桜子です。もう一度登場することは、多分ないでしょうけど。
花火は20キロも離れると見えなくなりますが、流れ星は100キロぐらい離れていても見えます。祭りの夜でなくても、たまたま けんたろうが夜空を見上げた時、一筋の流れ星が飛ぶ。遠いどこかの空の下で、誰かが今、同じ流れ星を見たかもしれない。元天文少年としては大いにそそられるシチュエーションです。
そこで、やっと真歩子の登場になります。真歩子は葉月学園テニス部の夏期合宿に行っているという、実は第34話の初めの方で使った設定を、その後誰も使わなかったのでリサイクルしました。合宿先は、山梨県か長野県、群馬県あたりをイメージしています(卯月町は首都圏だとして)。
同じ流れ星を見た けんたろうと真歩子には、同じ言葉を発させ、けんたろうが漏らした言葉を聞いた少女(これは誰と特定しませんでした。奈々以外は誰でも当てはまります)と真歩子が、もう一度流れ星が飛んだらお願いしよう、と念じる想いも、同じ言葉に収斂していきます。これは「二人の入学式」の付随文章で使った手法です。
結果的には今回も、前回をさらに上回る分量超過になりました。この次からは、もっと短い、凝縮した文章を書く練習をしなければなりません。
(2001.2.23)

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