番外日記
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2002年11月6日(水)〜7日(木)
清水なつきは、ゲーム中の日付で言うと12月18日、最後に登場するヒロインです。主人公とは別の学校に通っていますが、そのためにPlayStation版ONEは女生徒の制服が4種類(長森瑞佳たち、転校前の制服を着続けている七瀬留美、他校の生徒である柚木詩子、そして清水なつき)という、1つの学校を舞台にしたゲームとしては類い希な多彩さを見せています(もっとも世の中には、日本各地を放浪する間に12種類の制服を拝むことができるゲームというのもあるらしいですけどね)
初対面の場で清水なつきに「お兄ちゃん」と呼ばれたとたんに画面がブラックアウトして浩平のモノローグ──それも「…オレにはちゃんとした『妹』がいる…/…いや、いたんだ…」に始まる、ネタバレと言っても過言ではないほど具体的な説明が始まる場面は、他のキャラのシナリオではこれほどに説明調のモノローグが始まる例を知らないだけに、パソコン版になじんだプレイヤーにはいささか唐突な印象を与えると思います。その後すぐに清水なつきの兄が浩平に似ていて、そしてその兄は「この世界にはいない」と打ち明けられますが、その一言が発せられる時を除くと、登場からしばらくの清水なつきの言動は浩平をして「長森はこういう時に溜息をつくのだとわかった」と悟らしめるほど天然あるいは強引です。ま、日頃長森を困らせてばかりいる浩平には、いい薬でしょ、これは。
妹のみさおを失って以来現世からの逃避を望んでいた浩平と、亡兄の面影を浩平に求めた清水なつきは、ある意味では同類同士、引き合うものがあったのかもしれません。しかし浩平が清水なつきの兄を演じることを拒み、清水なつきも浩平に亡兄を求めることの無意味さを悟って一度は訣別します。そこからまた例の不可解な「永遠」とやらが始まって、浩平の存在が現世から消えていくことになるのですが、実は清水なつきも浩平と同じような、ただし浩平のそれとは異なる「永遠」の世界に踏み込みつつある──「YU-NO」風に言えば、長森たちが生きている世界に隣接していくつもの並列世界があり、清水なつきと浩平がそれぞれ別の並列世界に移行しつつある、ということになるのでしょうか──ようにも見えましたが、どうもそうでもないようで、清水なつきは現世に留まり浩平は現世から消えていきます。
そしてこれが澪および みさきのシナリオとの決定的な違いになるのですが、1年後に浩平は現世に戻ってきません。浩平が現世から消えて1年が経った時、清水なつきは忘れていた浩平のことを思い出したように解釈できますが、浩平と再会することのないシナリオの最後の言葉は「先に行っちゃうよっ」(澪は「背中、あったかいの」みさきは「浩平君、卒業おめでとう」)……これじゃ納得できん、というのが不評の大きな理由だと言われても頷かざるを得ません。
眼鏡っ娘にちょっと惹かれる傾向がある一プレイヤーとしては、清水なつきが1年後、浩平のことを思い出しつつもそれを振り切る決意の表明として、眼鏡を止めてコンタクトに換えたことには、
深甚なる遺憾の意を表明せずにはいられませんが……。
清水なつきシナリオについてネットを検索してみたところ、このシナリオはパソコン版ONE本編のあまりにも晦渋なシナリオを、何とかしてプレイヤーに理解できるように説明しようとして追加されたシナリオだという解説(KIDのシナリオライターへのインタビューを要約したような文書)がありました。それで上に書いたように、妙に説明的な部分があったのかと思いますが、それがうまく説明しきれなかったのか、もっと単純に浩平が戻ってこないエンディングだったからか、不評の原因はそのあたりにあるのでしょうか。
(11月7日アップ)

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