番外日記
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2002年11月1日(金)
川名みさきは高校3年生、主人公 折原浩平より1学年上です。全盲それも中途失明というハンディキャップを持っていながら(それを表現するためか、CGでは瞳にハイライトが入っていません)、それをほとんど感じさせない、明るく社交的で温和な性格、そしてしばしば「冗談だよ」の一言で浩平を担いだり、掃除当番をサボって屋上に隠れていたり、図書室で本を借りれば延滞の常習犯だったりといった、微笑ましいコミカル要素も持っています。BGMの題名「見た目はお嬢様」が語っているように。胃袋が異次元につながっているかのような、いささか非現実的な大食ぶりをわざわざ設定に加えなくても、充分キャラクターが立っていると思います。
一緒にいると知らぬ間に包み込まれているような安らぎと温かさを漂わせ、その中に一本芯の通った強さを持ち、それでいながら完璧ではなく、どこか抜けたような天然なところもある、少し年上の女性。いろいろな点で、「痕」の柏木千鶴と重なっているような気がしました。
みさきの強さ、それはもう想像がつくように、中途失明という言語に絶するハンデを乗り越えて生きていることです。終末近く、夜の屋上での述懐──
「私は綺麗な光景を見ることはできないけど、でも、その景色は間違いなく今自分が立っている世界に存在してるんだから。それを別の方法で感じることができるんだからって、だから今はこの世界が好き。別の世界に行こうなんて考えない」
五体満足でこの世界に生きていながら、その世界がいつまでもパラダイスであり続けることはないと悟った気取りで、その世界に生き続けることを心のどこかで拒否し、終盤ではわけのわからぬ「永遠」とやらの世界に甘美な憧憬を抱きつつ無力感に酔っている(それを最も強く感じたのが、みさきの卒業式に出席すると約束していながら、卒業式の会場に正面突破を試みようとしない腑抜けぶりでした)浩平ごときには、みさきの影を踏む資格もないと思ったのは、私の思いが強すぎるでしょうか。
そもそもこのゲーム、今までに私が相当程度までプレイを進めたゲームの中では、最も「主人公に共感できない」ゲームです。ここ数日間プレイ中に書いていた日記帳を今開いてみると、「浩平逝ってよし」の走り書きが何ヶ所もあるくらいに。序盤での七瀬と長森に対する浩平の態度を見ていると、これから先、七瀬と長森のシナリオを中断することなく完了できるか、大いに危ぶまれます。
(11月2日アップ)

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