ROLLING DOWN
制作者 様 拝領 2000年8月16日

ROLLING DOWN

「うう〜。だから出来ないって〜」
「またそんなことを...」
「いい?今度の追試でいい点取らなかったら、修学旅行行けないのよ」
「片桐先生に頼めば、何とかなるさ」
「もう。大体、理科と保健体育以外は、全部追試ってどういう事よ」
「いさぎいいだろう」
「はあ。どうして、英語の歌を聴いてるくせに、英語が出来ないの?」
「教科書に載ってるのは、生きた英語じゃない」
「社会なんか、暗記科目じゃない」
「暗記のための暗記なんか、本当の勉強じゃないぞ」
「じゃあ、同じような公式使ってるのに、どうして物理は満点近くって、数学は追試なの?」
「数学って聞いただけで、やる気がなくなるんだよな〜」
「....試験の前に、勉強した?」
「試験って言うのは、自分の実力を計るために受ける物だ。試験勉強なんか、邪道だ!!」
「....屁理屈の試験があれば、日本一なのにね」
「まかせろ」
「はあ。とにかく、この問題、ちゃんと解くのよ」
「え〜〜〜〜」
「私たちと一緒に、修学旅行行きたくない?」
「そりゃあ行きたいけどさ」
「じゃあ勉強して」
「それとこれとは話が別だ」
「もう。...じゃあ、ご褒美を付けましょう」
「ご褒美?」
「ええ。もし、この問題全部解いて、明日の追試でいい点を取ったら...」
「取ったら?」
「私たちの部屋で、一晩過ごさせてあ・げ・る」
「え。でも、友美達の部屋に、置き去りにされるって事じゃないだろうな?」
「本当に、こう言う時だけは、頭がよく働くのね〜。もちろん、一緒に一晩すごしてあげるわよ」
「......」(ゴクリ)
「じゃあ初めて」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「.......す、凄いスピード」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「....単純ね〜」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。おわった〜〜〜」
「はい。採点するわよ」
「ぜ〜。ぜ〜」
「ふんふんふん。凄いじゃない。これなら、追試も大丈夫ね」
「や、やった〜〜〜。約束は守れよ」
「あら、私が約束を破ったことがあった?竜之介君じゃないんだから」
「あう。と、ところで、友美の部屋って、誰が居るんだ?」
「ふふ。私の部屋のメンバーは凄いわよ。私と、いずみちゃんと、可憐ちゃんと、唯ちゃん」
「あれ、可憐ちゃんって、修学旅行来るの?」
「修学旅行くらいは来たいって言ってたわよ」
 トゥルルルル
「あ、電話」
「唯が出るさ」
「お兄ちゃ〜ん。可憐ちゃんから伝言」
「何だって?」
「行くわよ。ってだけ言って切れちゃった」
「....ど、どこで聞いてるんだ?」
「可憐ちゃんはいいとして、いずみは....怖いぞ」
 ヒュン。
 カッ。
「....いずみちゃんもいるんだ〜。うれしいな〜」
「...り、竜之介君」
「...頭が痛い」
「さ、刺さってるわよ。矢」
「友美〜。痛て〜よ」
 ガン!!
「な、何だ、この、やり場のない怒りを、何かにぶつけたような音は」
「...」
「で、唯は....まあどうでもいいか」
「悪かったね、どうでもよくて!!」
「なあ友美。今、影が差したけど、俺の頭の上...何かあるのか?」
「コーヒーの載った、トレイがあるわね」
「で、そのトレイは、誰が持ってるのかな?」
「唯ちゃんね」
「ゆ、唯ちゃん、このトレイはどうするのかな?」
「どうしようかな〜。手が疲れてきたし。滑っちゃうかもね〜」
「....わ〜い。唯も同じ部屋なのか。嬉しいな〜」
「竜之介君、台詞が棒読み....」
「せっかくコーヒーとケーキ持ってきてあげたのにな〜。友美ちゃんだけにあげようかな〜」
「.....お、俺が悪かった」
「わかればいいのよ」
「くう」
「大体、お兄ちゃんってば、どうして餌で釣られただけで、こんなに出来るようになるの?」
「まあ、能ある鷹は爪を隠すって奴かな?」
「隠しすぎて、いざと言う時に、出なくならないといいわね」
「友美〜〜〜」
「じゃあ、唯は下にいるから。あ、お母さんが、ドアは開けておくこと、だって」
「竜之介君、美佐子さんにも信用されてないのね」
「うう。俺は不幸だ。友美、慰めてくれ〜」
「きゃ〜〜」

 ガン。

「いった〜」
「竜之介君、わざわざ勉強を教えに来てくれた友美ちゃんに、なんて事するの!!」
「み、美佐子さん」
「さ、もう充分でしょう。友美ちゃん、竜之介君がこれ以上、変な気を起こさないうちに、帰りなさい」
「は、はい。じゃあ、お邪魔しました」
「友美〜〜」
「なに?」
「約束忘れるなよ〜」
「もちろんよ。じゃあ、明日頑張ってね」
「おう」

「さて、竜之介君?」
「あ、ぼ、僕、お勉強しなくっちゃ」
「あら。じゃあ、勉強の邪魔にならない程度に、切り上げなくっちゃね」
「あ、明日は追試だし」
「さ、じゃあそこに正座!!」
「あう〜〜」



「....友美の嘘つき」
「あら、心外ね。ちゃんと約束は守ったじゃない」
「縄で縛って、床に転がしておくのを、一緒に過ごすって言うか?」
「過ごし方までは、約束しなかったでしょ」


 ど〜も。
 す です。
 こちらには、初めての投稿になりますね。
 今回は、800さんのリクエストにより、友美SSです。
 リクエストは、友美で、コミカル、ハッピーエンドと言う物でしたが、さすがにハッピーエンドまでは、持っていくことが出来ませんでした。
 う〜ん。
 勘弁してくださいね。800さん。
 いずみ書きの私にとっては、友美って、かなり難しいキャラクターなんですよね。
 まず、いずみのライバルって言うのがありますから。
 で、マッドな友美は禁止されてしまったし。(笑)
 まあ、苦しみましたが、苦しんだなりの物になったんじゃないかと思います。
 では、気に入っていただけると、嬉しいのですが。

800のコメント
 「同級生2」SSライターとして、今も着実にSSの制作を進められている す さんの作品です。
 す さんのサイト「お昼寝宮」は、同級生2SSサイトとして知られていますが、ここでも先日、15000番を踏んだ人にSSのリクエスト権を進呈すると告示されていました。
 そこで狙いに狙って、運良く15000番を踏むことに成功したので、友美主演のSSをリクエストしました。それがこの作品です。
 いずみ萌えの方に友美SSをリクエストしたのは、やはり我儘だったのかもしれません。
 私自身、いずみ主演のSSを書く自信は全然ありませんから。それ以前に、SSそのものを書く能力がないという説が有力ですが(苦笑)

 す さんの後書きにあるように、ハッピーエンドにはなっていませんが、このくらいの短編としてはちょうどいいオチがついていると思います。
 それからこの、短い台詞の応酬で文章を組み立てるのは、す さん独特の文体です。
 実はこれ、一見簡単に見えてかなり難しい、才能のある人でないと書けない文章です。
 軽妙洒脱な文章というもの、私も書いてみたいとは思っていますが、なかなか難しいものです。

(2000.8.16)
補足
「お昼寝宮」は、2002年3月14日限り、閉鎖されました。長い間のご厚誼に感謝いたします。
(2002.3.15)

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