『賢者の贈り物』
賢者の贈り物
『同級生2』より「竜之介(主人公)」「篠原いずみ」です。
クリスマスCGの第2弾です。
今年のクリスマスには、昨年の「聖母子」ではなく、さりとてサンタクロースでもないCGを描こうと思った時、最初に浮かんだ題材は、O・ヘンリーの有名な短編「賢者の贈り物」でした。ニューヨークの安アパートに住んでいる若い夫婦が、それぞれが大切にしていた物──夫は懐中時計、妻は長い髪──を売ってクリスマスプレゼントを買うと、プレゼントは相手が売ってしまった物のための物──夫から妻へは飾り櫛、妻から夫へは懐中時計の鎖だった、という話は、きっと皆さんもご存じでしょう。
「同級生2」の登場人物の中から、「貧しくとも愛に満ちた暮らしを営んでいる」というイメージに最もふさわしい組み合わせを探してみると、これはやはり竜之介と いずみで、いずみが両親の反対を押し切って竜之介と駆け落ちしてからの暮らしぶりは、二次創作小説にもよく取り上げられています。
ただ、この二人を「賢者の贈り物」のストーリーに当てはめようとすると、ちょっと無理があるのですが、そこは何とか工夫することにしました。また、いずみから竜之介にプレゼントするための物も、懐中時計はあまりにも古すぎるので、現代風に変えています。

800「竜之介と いずみが『神田川』な暮らしをするようになって、初めて迎えるクリスマスイブ。クリスマスのプレゼントに、竜之介は いずみに銀の髪飾りを、いずみは竜之介に携帯電話のストラップ、ただし大変なレア物でその辺ではちょっと手に入らないような物だ、それを買おうとした。ところが年末で金がない二人は、プレゼントを買う金を工面するために、竜之介は携帯電話を、いずみは髪を売った。という場面だ。ちなみにカレンダーの曜日から計算してもらうとわかるが、年は1996年、携帯電話が今よりも高価だった時代っていう設定だから」
竜之介「真面目なんだかふざけてるんだか、今イチわからないんだよな、800さんって」
いずみ「もっとわからないのは、なんで私が髪を切って売るのか、だよ」
800「だから最初は、髪の長いキャラをヒロインにしようかと考えた、友美とか洋子とか唯──に髪を切らせたらネット生命の危険があるか──とか。『髪を切った友美』なんて、たぶん誰も描いたことがないだろうし。でも『神田川』な暮らしをしているというシチュエーションにふさわしいのは、やっぱり いずみしかいないと思ったから。
 それで、二人で暮らすようになってから、美容院へ行く金を惜しんでという理由ばかりでもないかもしれないが、いずみが髪を伸ばし始めたってことにしてみた。それをある時竜之介が描いたのが、左後ろの壁に貼ってある絵だ。『神田川』にも、そんな歌詞があったろう、『二十四色のクレパス買って あなたが描いたあたしの似顔絵』って」
いずみの似顔絵(竜之介 画) 竜之介「俺たちが生まれる前の歌だよなあ、それって」
800「それで、いずみの髪がだいぶ伸びてきたのを見て竜之介は、いずみに似合いそうな髪飾りを買おうとしたんだ」
竜之介「そっか…俺だったら、いずみのためにクリスマスプレゼントを買うなら、携帯売るより、短期間で給料のいいバイトをもう一つやると思うな」
いずみ「りゅ、竜之介…あんまり無理しちゃだめだよ、私のために、なんて……」
竜之介「篠原重工に入ってから、また携帯買ったからな。いずみのストラップ、大切に使わせてもらうぜ」
いずみ「うん……私の髪も、すぐ伸びるしね」
竜之介「気にするなよ。髪が長くたって短くたって、俺がいずみを好きなのは変わらないさ」
いずみ「竜之介ぇ…………」(真っ赤)
(2001.12.21)

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