番外日記
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2003年11月12日(水)
ずっと前から思っていることというのは、こういうことです。
夫婦の一方が浮気して家に寄りつかないなどして結婚生活が破綻してしまった時、どちらかが「離婚しよう」と言い出して協議離婚になるのは、よくあることです。協議離婚が成立しなかった場合は家庭裁判所に離婚調停を求め、調停も成立しないと離婚訴訟を起こすことになりますが、訴訟を起こすことができるのは次の場合に限られます。
一 配偶者に不貞な行為があつたとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明かでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。(民法第770条、原文通り)
つまり現実的には大部分は1番目と2番目、結婚生活が破綻する原因を作った夫婦の一方(有責配偶者)ではない、もう一方の側から起こすことになります。
ところが過去には5番目を根拠に(この「その他云々」というのは、法律をいくらでも拡大解釈できるようにするための決まり文句ですからね)有責配偶者から離婚訴訟を起こした例があったようで、それに対しては却下するのが判例となってきました。この番外日記を書くためにGoogleで検索してみたところ、判例となった昭和27年の最高裁判決に「法はかくのごとき不徳義勝手気侭を許すものではない」という文言があるのだそうで、まあ当然と言えば当然のことです。
それが昭和62年に、何十年も別居しているとか小さい子供がいないとか、いくつかの条件の下で有責配偶者からの離婚訴訟を認めた、重大な判例変更がありました。でもそれを知ってしばらく経った頃から私の中で頭をもたげてきた疑問は──協議離婚が成立せず離婚調停も成立しなかったから離婚訴訟になったのだとすれば──
──夫婦の一方が浮気したか何かして、その結果として何十年も別居していて、小さい子供もいなくて、それでも離婚しようとしなかったもう一方って、
い っ た い 何 を 考 え て る ん で す か ?
小さい子供がいるのなら「せめて子供が大きくなるまでは、堪え難きを堪え忍び難きを忍んで」、というのは理解できないでもありません。別居期間がそう長くはないのなら、今は血迷っている相手もいずれ目を覚まして戻ってくると信じることもできなくはないでしょう。しかしそうではなく、子供もいないのに、人生の大半を、結婚しているとはとうてい言えない状態で送らされてきて、そんな仕打ちを受けてそれでも離婚したくないというのは、最強度のマゾでなかったら、相手の遺産が目当て以外の理由が考えられますか?

ですがつい最近になって、また考えが変わってきました。これは現実にあり得ると思うのですが、夫婦の一方が愛人(独身の)を作ったために結婚生活が破綻したのであれば、もう一方が離婚に応じて離婚が成立した瞬間に、前者は大喜びで愛人と再婚するでしょう(前者が女性の場合は、原則として離婚成立から6ヶ月間は再婚できませんが。民法第733条第1項)。後者はそれを身を挺して阻止するために、自分の人生を犠牲にしてでも離婚に応じない、という場合もあるのではないか、と。
日本は一夫一妻制ですから、配偶者と離婚していない人は愛人と再婚できません(民法第732条)
もし再婚すれば、配偶者はその結婚の取り消しを裁判所に請求できますし(民法第744条第2項)
再婚した本人だけでなく再婚相手の愛人も重婚罪に問われます(刑法第184条)
どちらが先に死ぬかわからない相手の遺産欲しさに配偶者の地位に固執する人間と、相手が愛人と再婚するのを実力で阻止し、相手だけでなく愛人の人生をも踏みにじらんがために配偶者の地位に固執する人間、どちらも人間の心根の汚さをさらけ出しているとしか思えませんが、さて現実には、どちらが多いのでしょうか。
(11月24日アップ)

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