番外日記
日記本文へ戻る

2002年7月21日(日)
診療所に検査入院が必要だと言われていながら入院せず、どこからともなく現れては去っていく虹掛美雨。第一印象があまり良くないキャラの中に、深く重いストーリーを潜ませるのは、もはや常套手段かもしれません。
シナリオの大部分は、美雨に入院を承諾させること、そのために裕作に対する美雨の信用を勝ち取ることで占められます。大気もシナリオ終盤では「医者に必要なのは患者の信用」と時おり口にしますが、美雨は最初から最後までそれです。「医は仁術」とは言い古された言葉ですが、医療への信頼を揺るがしかねないようなことが後を絶たない昨今、重いテーマです。
それで美雨の病気というのは、放射線被曝による遺伝子の損傷──と言っていますが私見では放射線被曝による後天的な成長ホルモン分泌系の機能不全とした方が適切でしょうか。小学校高学年くらいから身体の成長が止まっているという、現実にあるのかどうかよくわからない症状です。
その、小学生にしては早熟かというくらいの外見に惑わされて、裕作はなかなか美雨の信用を勝ち取れないのですが、実は美雨は裕作と同い年です(17日付の番外日記で琴羽が「見かけ上年齢的に裕作に最も近い」と書いたのはそういうワケ)。そしてトゥルーエンドでも、美雨が大気に負い目を感じていることが暗示されますが、美雨と大気そして裕作の関係は、アナザーエンドへの流れでもっとはっきりします。つまり裕作と大気が東京にいた頃、裕作と美雨が同級生だったということ──それを裕作が完全に忘却していたというのが、私に言わせれば「シナリオライターの都合に合わせた、主人公のパッチ状の記憶喪失」なのですが。
そしてアナザーエンドでは、敢えて自分の臨終に裕作を立ち会わせまいとした美雨が、患者と診療所スタッフの連絡用端末に残していった遺言が圧巻で、ヒロインが生き延びるエンドよりそうでないエンドの方がシナリオ的に深いというのは、「加奈」の知的ルートを思い出させます。
──それだけにアナザーエンドの最後、美雨を喪った裕作が挫折したまま終わっているようにも見えたのは、ちょっと救いがなさ過ぎて、最後でつまずいたような気がしてなりません。登場人物(ここでは美雨)が生き延びることが救いであるという考えは必ずしも否定しませんが、登場人物が生き延びられないとしたら、残された人がその遺志を継ぎ、あるいはその出来事を糧にして新たな成長を遂げていくことができてこそ、真の救いがあると思うからです。
(7月24日アップ)

日記本文へ戻る