番外日記
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2002年7月8日(月)〜13日(土)
このゲームは、プレイヤーが担当する主人公松井裕作が、診療所内外のいろいろな場所へ1日3回移動することができ、移動先で他のキャラクターに会うことでシナリオが進んでいきます。そして折に触れて出現する選択肢(たいていは裕作の台詞という形を取ります)の選び方によって女性キャラの好感度が変化し、ゲーム終盤で各キャラのシナリオが確定した時点での好感度によってエンディングが決まる、というシステムになっています。
しかし森野大気シナリオは、この手のコマンド選択型アドベンチャーゲームとしては異様に難易度が高く、シナリオ中で出現する選択の全てに正解しないとトゥルーエンドに到達できません。しかもそれらが、好感度を高めるためにはその選択肢だけが正解であり他は誤りであるということが、その直後の大気の反応からでは到底わからないのがままあり(白風や琴羽だと、彼女たちの反応を見て「あ、これは好感度が下がったな」とはっきりわかる場合が多い)、常識的に考えてこれが妥当かと思うのが誤りだとか、一般的に考えても正解の見当もつかないのがあるとなると、これはちょっと意地が悪すぎるというか、ゲームバランスを過ったような気がします。
幼少の頃は裕作と一緒に東京で生活していて、8年前に母が病死して間もなく、父(クマ先生)とともに田舎の村へ引っ越してきて診療所に住み込んだ大気は、裕作の従妹にあたります。8年の歳月を経て再会した従兄妹とくれば、それが恋愛関係に変わっていって……というのがもう「お約束の予感」なのですが、その経過がまた長いのなんのって。
しかもシナリオの最終盤は、見るからに健康そのものの大気が、かつて母の命取りになったのと同じ難病で突然倒れるところから急展開し、アナザーエンドでは大気はそのまま昇天。ゲームの冒頭で診療所の方針とてクマ先生が熱弁を振るうところの「患者の意思を最大限に尊重する」理由は納得できましたが。
やり直してトゥルーエンドでは、大詰めがさらに長々と続くのですが、回想シーンを見終わる頃には、裕作が医師を志した理由もわかってきます。そして数年を経た最後のシーンで明かされる一つの真実──本編の時、裕作を診療所に呼んだのはクマ先生ではなくて大気だったことがわかると、全シナリオの核心に触れる大気のトゥルーエンドは最後まで取っておくべきだった、と思います。そう思う一方で、トゥルーエンドの最後のシーンはなくてもいい、つまりトゥルーエンドでも、今やはっきりと自分が医師を志したきっかけを心に刻んだ裕作が、病床の大気に「もう一人で頑張らなくてもいいんだ」と言ったところで大気が昇天してしまってもいい、とも感じたのは、先にアナザーエンドを見たからでしょうか。
なんか否定的な感想ばかり書いていますが、「無理しなくていい、今の自分にできることをすればいい」とか「医療に携わる者には信用が何よりも必要だ」とか、首肯に値する言葉がシナリオの随所にちりばめられているのは、シナリオライターの問題意識と造詣の深さに敬服しました。とかく日本では、医療現場でも二言目には「頑張れ」と言いそうですが、「頑張らなくてもいい」という一言が、人の呪縛を解くこともあると思います。

次に南田白風シナリオです。一見なぜ入院しているのかわからないほど元気な(まあ外来患者の中には、本当にどこも悪くなくて、村人とお喋りするためだけに待合室に入り浸っている手合いがいますが)白風の病気は、「心臓が小さい」と本人が言うところです。この診療所に2年(別の病院も通算すれば4年)入院している「患者のプロ」だそうですが、先天的な臓器の機能不全のような病気は薬で根治できるものではないですから、まあそうもなるでしょうか。
外見は、なんだかあまりにも狙いすましたように水野友美そっくりで、それで私は前々から事ある毎に「800さんはもちろん白風(に萌える)でしょう」と言われていたものですが、外見だけでないキャラ造形全体として見ても、今のところ(7月23日時点で)それを否定するに至っていないというのは、何でしょうかねぇ。
しかしシナリオは、「ちょっと待った」です。心臓が弱くて疲れやすいだけでなく、いつ頃からかは定かでありませんが突発的に目が見えなくなる症状を抱えていることが終盤で明かされ、しかもそれが次第に悪化している状況でいきなり転院→転院を拒否して逃げ帰ってくる(この時は目が全く見えない)→事果てて後には何事もなかったかのように視力回復。さてこの視力障害の原因は……心因的なものだった? 最後のシーンを盛り上げるためだけに強引に持ち込んだ仕掛け、と思って引いてしまったのは私だけでしょうか。
ちなみに白風シナリオの難易度は、大気シナリオに比べればずっと低いです。白風シナリオに確定する段階での好感度が低いと、それ以後全く進展しないまま時間切れ(9月1日、何事もないまま診療所をあとにする)を迎えることになるようですが、好感度の合格ラインは低いですし、そこまでの選択にはあまり意地悪なものはありません。
(7月23日アップ)

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