番外日記
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2002年5月17日(金)
システム上、4回目または5回目には、川奈由織または早瀬雫のシナリオをたどることができるようになっています。サマースクールの宿舎になっている天山荘の住み込み従業員である由織は、初回プレイから登場してきますが、雫は4回目で初めて登場してきます。登場からしばらくの間は由織よりも雫のほうが頻繁に顔を見るのですが、今回は由織のシナリオを読むことにします。
今までの3人(奈緒・ちなつ・つぐみ)と違って由織は東陽学園の生徒ではなく、夏休みの間だけ天山荘に来ている 管理人の息子ユウキの母親代わりを務めているということもあって、管理人とユウキが絡んでくるシナリオは、ゲームの中ではやや異彩を放っています。
人物造形的に重要だと思うのは、今までの3人の場合、義博が多かれ少なかれ彼女たちと共通する心の傷を持っていることが、シナリオ終盤の大きな推進力になっていたのですが、彼女たちと違って由織は、その心に「傷」を持っていません。そしてまた年齢的にも由織(ゲーム期間中に誕生日を迎えて23歳になる)は義博に近いですから、義博と由織の関係は「対等な大人の男女の関係」に近づきます。
しかし、5日目に義博が由織に、かつて深景から貰った絵をあげる、つまり深景との過去を思い出に昇華し得たと思われる行動に踏み切って、これで「義博と由織が結ばれるエンディング」確定と思われたのに、6日目に宿屋の廃墟で白服の少女を目撃してから、急に義博の心が迷路に陥って、その迷妄が解決されたのか解決されなかったのかよくわからないままにエンディングになります。そのあたりが、今一つすっきりしません。
それと、つぐみシナリオ内での回想シーンには、記憶が薄れあやふやになってしまってもそれを見て思い出せるようにといって月下美人(サボテンの一種)を植える場面があり、つぐみシナリオの最終盤では成長した月下美人が重要な意味を持っているのですが、由織シナリオでは実はその月下美人は由織がここへ来た3年前には枯れかかっていたのを、由織が丹精して生き返らせたのだとか。それぞれのシナリオは相互に連関しながらもパラレルワールドになっているので、ゲーム期間中の出来事が一致しないのは仕方ありませんが(奈緒シナリオでは、義博は深景から貰った絵を海に流す など)、シナリオの前提となる過去からの流れが、1つが他の1つを否定しかねないような構成になっていては、いささか面喰らいます。

ヒロイン6人中4人目となり、シナリオ序盤の流れも少しずつ変化が出てきて、ゲーム全体の折り返し点にさしかかった観がありますが、白服の少女が語る伝承や深景との思い出は、まだ全貌が見えてきません。全貌が見えるのは雫シナリオを終えて、深景シナリオに入ってからになるでしょう。

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